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信じてる。のつづき





冬、だんだんマフラーやコートが必要になる時期がやってきた。
スカートを短くして履く女子の気持ちが分からないと思いながら、歩道を歩く人達の姿をぼんやりと車から見ていた。

「お待たせ」

がちゃ、と音の後に聞こえた声に振り向く。
助手席に乗る俺の横に来たのは、田島―――クラスの担任であり、俺の恋人。

「おかえり…佑介」

「ただいま、慶」

付き合うようになってから2人でいる時は、下の名前で呼び合うようになった。

慶と呼ばれるのはこしょばいものだが、佑介から呼ばれるのは嬉しいものだ。

俺の頭を撫でるように優しく触れてきて、そして唇にキスを落とした。

「……誰か見てたらどうするんだよ」

「こんな慶を誰にも見せないよ…」

大人の余裕、というものなのか―――ちょっと意地悪な感じの笑みをこぼし、先程コンビニで買ってきたものを俺に寄越した。

「あったか…」

コーヒーが飲めない俺への配慮のあったかいココア。
手のひらを温めるように持ったところで、車がゆっくりと動き出した。




いつも休日には佑介の家へとお邪魔してお泊まり。

ここでだ、俺は悩みがある。


「お、出たか。じゃあ入るな。先に寝てていいからな」

風呂を先に借りて出てきた俺とすれ違いのように、風呂場へと行く佑介。

がちゃん、という音が佑介が風呂に入ったことが分かる。
かすかにシャワーの音も聞こえる。

俺はソファに腰かけ、膝を抱いて顔を埋めた。

「また言われた…」

思わず声が漏れるほど―――…

付き合って1ヶ月ちょっと。
休みには泊まり、たまに遠出したり、1ヶ月記念日は2人でお祝いしたりもした。
学校でも、前までの口論もよくしているもののそれは愛がある故と分かっていて、それなりに過ごしている。


なのに、だ。

(まだセックスしてない…)

これが俺の悩みだ。
キスはしているのに、それ止まり。
触られたことがないのだ。

けれど、俺は抱かれる側―――正直怖い…だけどそれ以上に、俺の事を好きではないのではないかと思うたび不安になった。

「ゆ、うすけ……」

思わず深く考えていた為、顔を濡らしてしまった。
意識すればするほど、ぽたぽたと涙がこぼれ落ちる。

泣いたのはいつぶりだろうか―――…


「―――慶?」

思わず肩が揺れてしまった。
佑介がその場にいることに気づかなかった。
でも、今顔を上げたら泣いていることがばれてしまう…

でも揺れてしまったから、俺が起きているのが分かっているのだろう。
ゆっくり佑介が近づき、俺の隣に座り、頭を撫でる。

「どうしたんだ、慶?」

「…なんも」

「…なんもないじゃないだろ。言ってみろ」

優しい声をかけてくれるが、俺はうまく言えなかった。

幻滅されたら―――…
嫌われたら―――…

それしか頭に無く、この関係が壊れることは嫌だった。

「慶―――…」

「ゆ、すけ…」

「んー?」

「俺、のこと…きら、い?」

「…―――はあ?」

一息置いて、先生の普段聞かないようなまぬけな声が返ってきた。
なんだか更に怖くなって、腕に力を込めて、頭をぎゅっと抱え込む。

「慶、とりあえず顔あげろ」

「…いや」

「慶」

「いやだ!」

無理矢理あげようとしてくる佑介に抵抗するものの負けてしまって、顔が上がってしまう。
見られたくないし佑介を直視できず、顔をそらすが、佑介は俺の顔が見えたようだ。

「…泣いてるのか?」

「…っ、」

「…何か俺、したか?言ってみな」

ゆっくり俺を包み込み、頭を撫でて…

それに嬉しくなり、ゆっくり口を開いた。

「…俺のこと、好きって言ってくれた」

「ん、言った」

「…優しくして、くれる」

「慶が好きだしな」

「…でも、」

「でも?」

「だ、抱いてくれない…」

「……」

言ってしまった…
それなのに佑介は黙りきってしまった。

幻滅された、かな。

「慶、こっち見て」

佑介の言葉にもう諦めて、仕方なく佑介の姿を視線に入れる。
佑介は優しく微笑んで、俺を見てくれていた。
その笑顔に息を飲む。

「慶…俺は慶が嫌がることはしたくない」

「……」

「でも、俺だって男だ。慶を抱きたい」

「え……」

「慶が嫌なんじゃないかなと思っててさ」

「…嫌、じゃない。…不安だけど…」

くす、っと微笑む佑介がまた俺を抱き締め直してくれる。

よかった…
俺を気遣ってくれてたんだ。


耳元に息がかかって、少し背中がこわばる。

「…大丈夫。優しくするから―――抱いていい?」

耳元に囁かれた甘い声。

俺の顔は絶対赤い。



全身が熱い―――――…





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